泥棒のはびこる街

1/1
前へ
/1ページ
次へ

泥棒のはびこる街

 ここは、泥棒の蔓延る街。  殺人こそ起きないものの、とても治安が悪い。  盗み、盗まれが平然と行われいる。  自転車で買い物に出かければ、買い物途中、自転車の籠に買った物を入れて置いてけば、15分もしないうちに盗まれる。自転車をアパートやマンションの自転車置場に鍵をかけ忘れると、半日で盗まれる。そんな街だ。  そんな街で、一軒の家が盗難被害に遭おうとしていた。  ドアノブを回してみた。 「あれ、開いた」  これはチャンス。  泥棒は周囲を確認しながら、鍵の開いている家に忍び込んだ。  家の中に人の気配はない。  なんて今日は幸運な日なのだろうと想いながら、泥棒は家の中を物色し始めた。  すぐに良いものは見つかった。  大量の指輪が見つかったのだ。しかも宝石付きの。  思わず、声をあげて小躍りしてしまいそうなる泥棒。  家主が帰って来ないうちに、そそくさと指輪を袋に入れて、家を出るのだった。  そうして、泥棒は手にした指輪を手に質屋に向かった。  質屋で盗んだ指輪を見てもらう。目をキラキラさせながら。  質屋から出た金額は? 「1000円ですね」 「……1000円」 「はい。1000円です。全てイミテーションなので。お売りになりますか?」 「……はい」  泥棒は意気消沈して、1000円札を握り締め、質屋から出て行った。  質屋の店主は泥棒が帰るまで、笑いを堪えるのに必死だった。  泥棒が帰ると「あははははは」腹が捩れるくらい笑った。 「ああ、面白い。あの泥棒目利きがないにも程があるぞ。本物をイミテーションと言ったら信じてしまったぞ。これだから、この家業は止められない」  泥棒の蔓延る街。今回は、泥棒がついていなかったが、質屋の店主だって、今後ついてないことがおこる可能性がある。  ここは、そう言う街だから。 終わり
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加