第4話 ナイフ

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第4話 ナイフ

 王子発言は大受けだった。やがて、とりまきをしずめてゲドウが(わら)う。 「証拠をみせてみろよ」 「その宝石が、その(あかし)だ」  との答えをきくと、無言で俺の頭を蹴飛ばし、俺から奪ったナイフを手にした。 「ふざけやがって。死体からはぎとったんだろうが。いつものように、ずっとやってきたように。おまえは屍肉(しにく)あさりの盗人(ぬすっと)だ」  屍肉(しにく)あさり、盗人(ぬすっと)、スカベンジャー、いや、俺は渉猟者(しょうりょうしゃ)だ、渉猟者になるんだ。と心のうちでくりかえす。けれど、無意識のうちに声にでていたらしい。 「なにが渉猟者(しょうりょうしゃ)だ」  その声は、ふくれあがる怒りを隠そうともしていなかった。そのさきに待つのは、なぶり殺しか。屍肉(しにく)あさりたちは、世界に復讐をするかのように死に群らがる。執拗(しつよう)ないたぶりで意識はうすれ、わずかに明るみはじめた空だけが閃光のように頭に突きささり、夜明けをつげる鳥の鳴き声。  ……そろそろ始末をつけようぜ。  とりまきの連中も、あきてきたのだろう。つかれた様子でゲドウに提案するが、すぐには返事がない。すこし、()をおいて、  ……いや、待て。他にもあったんじゃないのか。どこかに隠してあるのかもしれない。途中で仮小屋があったな。こいつは、間違いなく何かを隠してやがる。  確信をもった声をきいて、あの子の寝顔を思いだすとともに、死をうけいれていた心の底に、ぼうと火がともった。  はれあがり、視界の狭まった目をひらいて、ゆらりと起きあがる。まだ立つ力が残っていたことにおどろく。それはゲドウたちにしても同じだったらしい。化け物でもみるようにしていた。あれだけ痛めつけてやったのに、立てるはずもないのにと。  五指のあざが残った右腕がきしむ。  キリキリ、キリキリ、ねじきられてしまいそうだ。屍肉(しにく)あさりたちのあげる罵倒(ばとう)の声はきこえず、みょうに静かだ。
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