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「バカをいえ。わしらは狩人だぞ。どうして気付かないとおもう。人やケモノの気配がわからずに狩などできようか。幼子をすてた輩をとっちめてやろうとあとを追っておったのさ。そこへあの悲鳴だ。いやでもわかる」
無言で手をさしだし、二杯目をすすめてくれた。どうやら臓物を煮込んだスープらしい。からだが内側から熱くなってくる。香辛料がきいていて獣くさくもない。
「屍肉あさりを抜けたのだな。おまえは愚かだが、正しい道をえらんだ」
ぽんと、あたまに手をおかれて、かるくなでられた。寒空のしたで凍えても、さげすみの視線をうけても、すきなように嬲られても、もはや出ることのなくなっていた涙が出てきてしまう。ごしごしと目をこすりながら熱いスープを吹く。
タギの太いうでに、ぐっとひきよせられた。人は人に抱きしめられるだけで救われる。それを、なぜ忘れていたのか、なぜ忘れきらないのか、なぜ忘れてしまうのだろうか。忘れなければ、生きていけないからなのだろうか。
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