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第8話 弓と呪い
森で拾われてから数年、思い起こしても幸福な日々をおくっていた。
俺とレナは、狩人の一族にうけいれられた。狩のために移動し続けるとはいえ、渉猟者とは異なり、一定のルートを踏んで、固定の解体所や交易所をもつため、スカベンジャーといわれることもない。
俺自身が十代のなかばをすぎ、レナも、おそらく十といくつかの歳になった。
言葉を知らぬこわがりと言われたころと変わらず、レナはいまだに言葉を発することがない。それだけが心配の種だったが、あいらしく健やかに育ち、リップを姉のようにしたって、ふたりで狩りにでかけることもある。
自分とレナが実の兄妹じゃないことは、だれにもいっていない。狩人たちは過去を詮索しないし、俺も屍肉あさりだったころのことを話したくはなかった。なにより、銀貨や宝石のことを話すのは不吉なように感じていた。
このきびしくも幸せな日々が失われるのではないかと。宝石がどうなったのか、ゲドウがどうなったのか、もう忘れてもいいような気がする一方、忘れてはいけないようにも思えた。
ナイフのことも、むかしみた夢のように薄れつつあったけれど忘れることはなかった。
狩のたびにおもいだす。
タギについて狩をまなび、その作法も技も信仰も身につけた。自分でいうのもなんだが、技だけならタギをしのぎ、一族のなかでも一二を争う腕前になった。
もちろん、ひとなみに努力もした。むしろ、ひろってくれたタギのためにも、ひとなみ以上の努力をしたけれど、俺を凄腕の狩人としたのは、うけた呪いのおかげだった。呪いと呪いは、おなじもの。
おばばの言葉どおり、なにかを捨ててなにかを得る、呪いとはそういうものなのだろう。
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