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俺からのClaim、俺の初めてのClaim。
けど、碧はなにも反応しない。驚いたのか、想像もしていなかったのか、ポカンと口を開けたまま、佇んでいる。
「あのさ、自分で言うのもなんだけど、俺はカッコ悪いし、卑怯で情けない、いろいろ駄目なDomだよ。碧のことを守るつもりで、碧に守られてた。そのことにも気付けなかった。でも、」
碧はなにも言わない。断られる? 拒絶される? 碧にNoを突きつけられたら、俺はもうなにも残らない。
「碧と、離れたくない。俺に縛りつけておきたい。俺のものだって、誰にも渡したくないから、名前書いて、捕まえて、誰にも見られないように、隠しておきたい」
笑われるよな。実際の俺は、自分が騙されて監禁されてるんだから。
でも、いま言いたい。碧に言いたい。碧だから、言いたい。
「……いいよ」
「え?」
「とっくに、緋聖くんのモノなんだから、僕は」
椅子から立ち上がった碧が、俺を見下ろす。その目に、惹き込まれる。
「して。緋聖くんの好きにして欲しい。うんと滅茶苦茶に、されたい」
限界だったのは俺だけじゃなかった。
「緋聖くん。お願い、だから」
「セーフワードは覚えてる?」
「要らない」
「俺が要求してることを言えないSubとは、できない。Say」
強いGlareを下から放つ。碧の顔面を舐め、顎から喉へのラインを狙って、力ずくで絞め上げる。
喉を執拗にGlareで圧迫すると、すぐさま苦悶の表情へと変化する。
「……ッ、イィ」
「聞こえない。言えないのか? それとも、もう気持ちよくなってる?」
喉から下へ、鎖骨を通って胸骨から肋骨へ、指先を這わせるようにGlareで舐っていくと、碧は吐息のようにセーフワードをつぶやいた。
「……パクチー」
「そうだ。それだけは、忘れるな」
「わかった、から、」
浅い呼吸の下、目を潤ませた碧がすがるように顎を前へ突き出す。
「Kneel」
低く命じると、碧はその場に膝をついて、きれいな割り座を見せた。
抑制剤を飲んでたって言ってたのは嘘なのか? これだけ完璧なKneelを見せつけてくれるとは。どこかのDomとプレイしてたんじゃないのか? 俺とアンディみたいに。
俺とアンディの間に、情なんてない。ただの欲求解消に過ぎない。実際のところ、疚しさすら感じない。けど、碧はそうは考えないだろうな。俺のことが信じられない、と言うかもしれない。下手に知られるのは厄介だ。碧を傷つけるだろう。
「なんだ? このくらいで褒めてもらえるって期待してた?」
俺は椅子から離れて、碧の顎を掴むと、軽く息を吹きかけた。前髪が揺れる。碧の目も泳ぐ。
Domの支配を欲しがる、Subの顔をしている。
「ちが、そ、じゃなくて、」
「じゃあ、なに?」
「もっと、下さい。緋聖くんのCommandを、僕に、下さい」
「そんなに、いじめられたい?」
緩急をつけたGlareで煽る。軽く臍をくすぐって、その下へ。弄ぶように、Glareで狙いをつける。
「うん……ひどくして、忘れられないくらい、一番ひどいこと、して。今夜は、緋聖くんがClaimしてくれた大切な日だから」
うわずった声で告げられて、理性のタガが弾け飛んだ。
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