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熱く目を潤ませた碧が、Kneelを披露している。
俺を欲しがって、俺のCommandを求めて、もっともっとSubとして使われたいと願っている。
「Stand up」
天井から糸で吊り下げられたマリオネットのように、碧がフラフラと立ち上がる。これはもう完璧に落ちている。全部投げ出して、身も心もなにもかも、俺のほうへ寄りかかっている。生かすも殺すも、悦ばせるのも苦しめるのも、すべては俺次第。
「Go&Wait」
寝室のドアを指さしてCommandを与えると、碧は頬を上気させて歩き出した。はやる気持ちに対して、足元は覚束ない。ちょっとした酩酊状態に入っている。
そうだ。それでいい。いまの碧は、まっさらな状態。空白のページに、俺というDomの痕跡を刻みつける。
碧を寝室で待たせておいて、俺は部屋の全体を一周した。防犯カメラや盗聴器の類が気になった。ない、とは言い切れない。
あのチャールズというDomが、俺のことをどう評価してるのかはわからない。部屋の中まで監視するだけの価値がある、と考えているのかどうか。
とはいえ、俺がざっと見渡したくらいで発見できるような、野暮なブツはないだろう。まあいい。見られてる、という前提も悪くはない。
足音を立てずに、碧の待つ寝室へと向かった。待てを言い渡しておいた碧は、ツインベッドの端に座っていた。
「緋聖くん……」
具体的な指示はしていなかったから、どうやって俺を待てばよいのか、碧にはわからなかったらしい。
「Strip」
横っ面を平手で叩くようにGlareをぶつければ、碧はもうそれだけで恍惚となっていた。
「そうだ。最後まで全部だよ。ああ、そうだ。イイことを教えてやるよ」
「え、」
「この部屋、監視されてるぜ。おまえの脱ぎっぷりを、固唾を呑んで見てる奴がいるってこと」
「な、なんで、」
とろけていた碧の顔が一瞬にして曇る。どこにカメラがあるのか、碧は探るような視線を巡らせる。本当のことを教えてやるつもりはない。
「見せつけてやれよ」
「うそ、でしょ」
「あ? 嘘じゃねえよ。俺のCommandがきけないのか?」
シラフでやれば、酔っぱらいのパワハラだってのは承知の上だ。だから、命令する。アウトローな組織でも、やってるやつだ。トップの命令は絶対。ボトムはヘソ天で受け入れなきゃいけない。
「碧。もう一度言わないと、わからないか?」
「だって、なんで、見られてるってわかってて、なのに、」
「ギャラリーがいるほうが興奮するだろ、おまえ?」
「そんなことないっ。や、やだよ、だって」
「わかってると思うが、Commandがきけないならセーフワードだ。でなきゃ、俺はそろそろカウントダウンするぞ」
十、九、八、七、って数えていくのは、躾でよく使うやつ。もちろん、まともな保護者や教育者はやらない。普通に虐待。
だけど、俺らは普通じゃない。
「見せてみろよ」
Glareで畳みかけると、碧は無言で喉を鳴らした。
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