[7]俺は俺以外のものになれない。

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 壁を背にして、体育座りをさせる。両手で左右の足首を掴んで、少しずつ開かせていく。俺が仕込んだAttractを披露する碧は、だいぶ呼吸が浅くなっている。 「もっと、だ。まだ、見えない」 「ぁ、んっ…」 「駄目だ。下を向くな。Up(顔を上げろ)」  涙を浮かべながら、顎を突き上げて、目線だけで訴えてくる。  恥ずかしくて、つらくて、苦しくて、なのに、体が昂ってしまうのだと。嫌なことをさせられているのに、見せたくない、見られたくないのに、そこは理性のタガを裏切って興奮を示している。 「はぁ、ッああ……」 「いい顔になったな」  心と体のバランスが取れなくなったSubが、ひどく苦しんでいるのがたまらない。  きれいに整えられたシーツの上で、しどけない姿をさらす碧は、俺の歪んだ嗜虐欲を満たしてくれる。 「っ、あ、いやァ」 「Stay(そのまま)」  耐えられなくなった碧が身動ぎしそうになるのをGlareで刺す。 「なにが嫌なんだ? 俺のCommandがもらえて嬉しいだろう?」 「ん、っンン」 「碧は本当は、見られるのが大好きなんだよ。自分に嘘はつけない。だから、そんなに興奮してんだろ?」 「ち、ちがっ」 「なにも違わない。いいんだよ、それで。おまえが認められなくても、俺は知ってる。頑固で、不器用で、いやらしい。素直じゃないけど、碧は俺だけの、かわいいSubだからな」  貶められて、辱められて、唇をわななかせているのに、どこか安堵した表情をしている。 「Good boy(いい子だ)」  うんと褒めて、撫で回して、とっておきのGlareで包んでいく。緊張で硬くなっていた碧の全身が、俺の一言で弛緩していく。  StayのCommandを解かずに、俺は碧の足の間に陣取ると、膝裏に手を入れた。 「ん、え、なっ、」  狼狽する碧をなだめるように、足の付け根をさすって、目的のものに口をよせる。舌を伸ばして、滲み出した蜜を舐め取る。 「や、やだ、いいよ、そんな、汚い、から、ッ」 「違うだろ、碧。教えたはずだ。Say(言え)」 「え、あ、ンン……して、もっと、たくさん、食べられたい」 「食ってやるよ、残さず」  俺は見せつけるように下品な舌舐めずりをすると、大きく開いた口で碧を咥えこんだ。 「ンンンッ!」  上下の唇で挟んでチュウチュウ吸いついて、さらに奥まで飲みこんでペロペロ舐め回す。唾液を絡め、喉全体を使って擦りあげ、思う存分貪りつくす。 「や、っ、アァ……ン」  悲鳴じみた声さえ愛おしい。吸えば吸うほど、新たな蜜が溢れ出す。 「や、やだ、も、出ちゃう、から、」 「やめたいの?」  口を離して問いかければ、碧は放心したように体を震わせている。 「碧、Kiss(キスして)」  顔を近づけて囁く。卑猥なポーズのまま、濡れた唇が重ねられる。 「そう、いい子だ」  今夜はうんと甘やかしたい気分だった。ドロドロに蕩けた碧が、待ち切れないように熱い息を吐き出す。  欲しい、と思った。  いますぐ、碧が欲しい。
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