【5】起きた子は寝られない

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「かなり強いGlareにしか反応しないんだよ、碧は」 「……」 「大丈夫? 少しやりすぎたかも。気分悪い?」 「いや、違うんだ。そうじゃなくて」 「トイレならそっち」 「え、あ、ああ。違う、けど」  頬を上気させた碧が半開きを口から長い息を吐き出す。いや、エロいだろ、それは。  他の客はいないし、こういう店だから店員は見て見ぬふりしてくれるけど。 「これ、これが欲しかった」 「え?」 「どこにもなくて、緋聖くんの、これが欲しくて」 「いや。待て待て待て。落ち着け、おい」  無防備なトロ顔をさらすな。おまえ、それ完全にダメなヤツだから。アウト。公然猥褻罪モノ。わかってるか? 「ちょっと、水でも飲め。深呼吸しろって」 「う、ううん」  とりあえず落ち着かせないと。碧はすっかり目が据わってる。別人みたい。いや、こっちが本性なのか? 体調を崩すくらいプレイに飢えたSubの顔。 「お願い、もっとほしい」 「おい」 「緋聖くんじゃないと、ダメなんだ」  真顔で迫られて、思わず後ずさりそうになる。いや、こんな狭い店内じゃ無理なんだけど。 「おまえ、意味わかって言ってるよな?」 「……うん」 「いいんだな、本当に」 「おねがい。ぼく、もう」  ああもう、完全にSubじゃん、おまえ。Domを必要としてるSubを前にして、俺が断れるわけないじゃん。理屈じゃないんだよ。だって生理現象なんだから。  しかも、俺のGlareじゃなきゃ駄目まで言われて、そこで断る奴はDomじゃない。  いままで碧を避けてきたけど、もう無理。ここまできたら、腹をくくるしかない。 「じゃあ、今夜は俺につきあう?」  カウンターに腕を組んで、頬杖をつく。至近距離から上目遣いで碧を見つめる。すでに潤んだ目がゆっくりと瞬きする。  合意なんてさ。ご大層なもんじゃないんだよ。契約なんかじゃない。  空気? 雰囲気? 視線が絡んだら、もうそこで決まりだろ。  俺は碧が欲しい。だから、碧も俺が欲しい。もうどうしようもなく、パズルの凹凸みたいに、磁石の両極みたいに惹かれるものなんて、止めようがない。 「じゃ、いこうか」  繁華街でも特にこの界隈は、ダイナミクス関連の施設が点在している。俺にとっては馴染の店ばかりだった。 「あ、あの、緋聖くん。えっと、どこへ?」 「イイところ。そうだ。おまえからの質問は一切禁止な。碧は俺からの質問にだけ答えればいい。わかった?」 「う、うん」  有無を言わさぬ勢いで押し切ると、碧は脊髄反射みたいに頷いた。  俺は足早に通りを横切ると、個人経営のプレイルームへと碧を引っ張っていった。
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