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アーシャは過保護である。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
思わずパソコンの前、私は雄叫びを上げてしまった。ずっと倒せなかったボスを、ようやく討伐できたためである。
現在やっているのはオンラインゲーム“彼方の咆哮”。冒険者たちが未知のダンジョンを探検し、次々お宝を見つけていくという王道のRPGである。元々はスマホのアプリゲームなのだが、私は一緒に配信されているパソコン版の方をプレイしているのだった。
スマホだと、どうしても容量という問題がついて回る。彼方の咆哮はグラフィックが非常に美しいハンティングゲームとして知られているが、その分非常にアプリ自体は重い。正確には、アプリの中のユーザーデータが重いのだ。同時に、スマホだとどうしても動きが多少カクついてしまう。
よって大きな画面で綺麗な映像を楽しみたい人、容量を気にしたくない人はパソコンでプレイする傾向にあるのだった。
現在マルチプレイで討伐したのは“ダイノレックス”というモンスター。こいつがまた狂暴で、特にAランク以上の討伐だと難易度が鬼としか思えないくらい上がるのである。ティラノサウルスのような見た目のモンスターなのだが、真正面からの攻撃が一切効かない。後ろに回って攻撃し続けないといけないのだが、後ろに行くと今度はシッポをぶん回して攻撃してくる。そしてこのシッポの一撃がめちゃくちゃ痛い。しかも振り向くのが早い。
ダイノレックスを一人で倒せる人間は、通称“英雄”と言われ、皆に尊敬され持て囃されるのが常だった。で、当然一般的なプレイヤーである私は一人では到底倒すことなどできず、仲間の力を借りているというわけである。
今日一緒に討伐したのは、ハンドルネーム“ラクラク”さんだった。このゲームを始めた時から一緒に遊んでいるネット友達である。私より少し早くプレイを始めたらしく、先輩としていろいろ教えてくれる親切な人なのだった。
『やったやったやったああああああああああああ!ラクラクさん、やりましたよおおおおおおおひゃっほう!』
『落ち着いてくださいネネさんwww すごい、キャラが荒ぶってんじゃないっすかwwwww ああ、でも本当に良かった!今日は二人しか集まらなかったから、無理かと思ってましたね』
『ほんとですよおおおおおお!ああ、何もかもラクラクさんのおかげです!本当にありがとうございますううううううううううううう!!!!!!!!』
チャットでラクラクさんとやり取りをする。ちなみに私のハンドルネームは“ネネ”である。本名が“桜木祢子”なので、ネネ。非常に安直な名前ではあるが。
とりあえず忘れないうちに、ダイノレックスから素材をはぎとっていく。剥ぎ取りが終わったところでミッション終了のボタンを押した。二人で共にギルドに戻っていく。
――ああ、本当に夢みたいだ。今日討伐できてよかった、ほんとよかった!これで夢の“パールドレス”が作れるよおおお!
一体何回、あのダイノレックスに泣かされたことか。それもこれも、ラクラクさんがサポートを頑張ってくれたおかげだ。あの人が毎度毎度ベストタイミングでダイノレックスを麻痺させてくれなかったら、今回の討伐成功はなかったことだろう。
あとで何かプレゼントしようかな、と自分の宝物ボックスの内容を思い返す。彼は“黒石”が枯渇気味と言っていたから、それでいいだろうか。
『あの、ネネさん』
そんなことをつらつら考えてチャットを見ていた時だった。ラクラクさんがこんなことを言いだしたのである。
『良ければ今度オフ会しませんか?私、貴方とぜひお会いしたいのです』
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