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夢
士郎は幼い頃から同じ夢を見た。
山の奥の古井戸の前で誰かを待っている夢だ。
やがて同い年位の少女が山道を上がって来る。
白い緞子の着物を着て、長い黒髪はそのままに、白い肌に赤い頬の美しい女の子だった。
「やっとお会いできました。ずっとあなた様にお会いしとうございました」
彼女が大人びた言葉でそう語りかけ、二人が手を取り合うと、古井戸から濛々と黄色い湯気が立ち始める。手を握ったまま、はっと井戸を見る二人。
そこで必ず目が覚めた。
一年に一度か二度見る夢だった。
その度、士郎と一緒に少女は成長していた。少女から大人の女性へと美しく変わっていく。
あれは誰なのか。運命の女だろうかーー?
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