SNOW FAMILY EP1 家族作り大作戦

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 こうして、イエティと雪女は夫婦となった……。  だが、雪女の方はともかく、イエティの欲する最重要の目的を達成することはなかなかにできなかった──即ち、種の保存のための子孫を作ることである。  じつはイエティ、雪女のことを少々誤解していた……彼女は姿形こそ人間そのものであるが、彼女はホモサピエンスでもなければ、実存する生物でもない。彼女は精神的な存在──妖怪(・・)なのだ。  それでも〝気〟の交流により、人間の男との間に子をもうけることのできる雪女であったが、今度はイエティの方が、そんな人間の男とは魂の形や〝気〟の性質が違いすぎた。 「ごめんなさい。あなたの望みをかなえてあげられなくて……」 「君のせいじゃないさ……子供は、養子をとることにしよう……」  謝る雪女に首を横に振ると、イエティはそう言って穏やかな笑みを毛むくじゃらの顔に浮かべる。  しばらく雪女とともに暮らすうちに、イエティはこの生活に居心地の良さを感じるようになっていた……。  そもそもの妻を持つ目的であった子孫を作ることよりも、彼女と幸せな一家を築くことに彼は重きを置くようになっていたのである。  だが、それにもやはり人材の問題というものが付きまとう……彼らの子供となる者も、この過酷な環境で暮らしてゆける生存能力を必要とするのである。 「だが、そんな子供、はたしているんだろうか……」  寒空の下、太い腕を組んでイエティは天を仰ぐ。 「……そういえば一つ、心当たりがあります!」  そんな夫の巨体を見上げ、雪女は思い出したかのように顔色を明るくしてそう告げた──。
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