1動物

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 サバンナを困らせる厄介な問題がなくなり、動物たちがのんびりと暮らしているころ。  ドドドドドッと地響きがしたと思えば、西からガゼルの群れがやってきて、うつらうつらと昼寝をしていたキリンは、ぱっちりと目が覚めてしまった。  続いて、パン、パンと乾いた音が二つ。 「待って待って、ガゼルさん、どうしたの」  慌てたキリンが走ってきた数匹のガゼルに聞くと、次々と答えてくれた。 「あぁキリンさん。私たち、川のほとりで休んでいたんです」 「そううしたら、なにか黒くて長いものを持った人間たちが、私たちを狙うものだから……」 「だからだから、みんなで走って逃げてきたんです」  ガゼルたちに同情しながら、キリンはいくつかの質問を投げかける。 「思い出させちゃうようで申し訳ないんだけど、その人間、なにかに乗っていた?」 「ハイ。『くるま』に乗っていました」  車、という情報だけではなにが目的か推理するのにまだ不十分だ。 「何か持っていた?」 「えっと、大きな箱とか、紐とかロープ、ナイフ……とにかく痛そうなものです」 「そう……教えてくれてありがとう」  キリンは少し考えると、ライオンへ伝えるために足を動かした。 「なに!?また密猟か!」  キリンから先程の件を聞いたライオンは、呆れ顔をしつつ仲間を引き連れてガゼルたちとは逆方向に駆けていった。  恐らく、密猟をする人間を追い払いに行ったのだろう。  最近、サバンナではこういった密猟者が増えている。  捕まったら最後、研究材料になるのか、はたまた殺されて美術品になるのか、なんにせよ想像はしたくない。  ガゼルたちが避難して数分後、ライオンたちが戻ってきた。 「キリンくん、明日、動物会議を開く。伝えておいてくれ」 「わかりました。伝えておきます」
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