198人が本棚に入れています
本棚に追加
静を追い出したあと、キララは何社面接を受けても不採用。大卒で美貌の若い女というのは、かくも嫉妬されてしまうものなのだ。
静が働いていた店ならまかないも出るし便利かと思ったが、店長はキララのバイト希望を断固拒否した。
「高校中退の静ですら時給千三百円もらえたのよ。キララちゃんなら時給三千円三食付きが妥当でしょ」と言っただけなのに。
(きっと、キララちゃんを雇わないよう静が言ったんだ。もしくはこの店長がキララちゃんの可愛さに嫉妬していて、キララちゃんを入店させたら、男たちがキララちゃんの可愛さに惑わされて仕事をしなくなってしまうと判断したのよ。あたしにそっくりで、ものすごい美人なんだもの)
松にもキララにも、とにかくお金がなかった。
お金がないのに生活レベルを落とせない。
エステに行きたいしヘアサロンに行きたい。
人気レストランの一日十食限定ランチも、遺産が入れば毎日食べられる。
いち早く遺産の金額が知りたくて、手紙が届いたその日のうちに、なけなしの金でバスに乗り、実家最寄りのバス停で降りた。
高校卒業まで住んでいたから、勝手知ったる我が実家。
松はチャイムも押さずに上がり込んだ。キララもそれにならう。
居間にはすでに梅が来ていた。
座卓には母のイヨが座っていて、梅はその向かいに座っている。イヨを睨んで、苛立たしげに座卓に肘をついていた。
最初のコメントを投稿しよう!