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「あ~疲れた。カフェラテないのカフェラテ。もしくはキャラメルマキアート」
キララが畳の上に足を投げ出して、イヨに言う。
イヨは聞こえていないのか、松たちをちらりとも見ずにスマホのカメラをテレビに向けている。
テレビでおすすめ時短料理なんて特集をやっているから、レシピを撮影するんだろう。
「ちょっと母さん、失礼じゃない! キララちゃんが飲みたいっていってるでしょ。出しなさいよ!」
松が声を荒らげてもテレビを注視して、返事ひとつしない。
「チャイムを押さずに勝手に上がり込んで、挨拶すらしないお前たちに失礼だなんて言われる筋合いはないよ。仏壇に手を合わせようっていう素振りすらみせない。なにか飲みたいなら自分で用意しな。コーヒーを淹れることすらできないなんて、お前たちの手足はなんのためについているんだい」
ようやく口をきいたかと思えば説教してくる。嫌な女だ。
「実家なんだから好きにしてもいいじゃない。さっさと遺産よこしなさい。あるんでしょ! こっちは支払いの滞納がたくさんあって大変なのよ!」
「おいババア。松とキララが来るまでは話すことはないって言っていたじゃない。来たんだから話せ」
「そうだそうだ。アタシの取り分だってあるはずでしょ。ちょうだいよ」
梅も我慢の限界で声を荒らげ、キララも援護する。
イヨは眉をひそめ、深々とため息を吐く。
「遺産の話をするのはわたしじゃあないよ」
イヨが言うのを待っていたように、イヨの背後、ふすまが開いた。
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