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静を優一のところにやった日から、全部がうまくいかなくなった。
静の金を使えなくなったし、静と連絡が取れない。
家事をさせることができないから家は汚れる一方。
そのうえ、父の遺産相続人から排除されてしまった。
あと一言でも遺産を寄越せと言ったら、イヨは本気で警察を呼び弁護士を雇う。
慰謝料請求されたらいくら払うことになるんだろうか。
本来の、正当な権利を主張することを許されない。
なんて腹立たしい。
キララはこんな状況でも、手の平を打ち合わせて笑う。
「それってー、廃除されたのは伯母さんと母さんだけでしょ。学校で習った気がする。廃除されてないアタシはもらえるのよね」
「それは今後のキララの行い次第だ。自分で金を稼いで自立するなら、まだ可能性はあるが……これまで通り静や他の人間を足蹴にして生きるなら、廃除手続きをすることになる」
金をもらえると喜んでいたのもつかの間。キララの笑顔も凍りついた。
「これで話は終わりだ。さあ、お前たちが望んでいた遺産の話は終わったから帰りなさい」
くそったれ、と怒鳴り散らしたいのに、和男を気絶するまで殴りたいのにできない。したら最後、警察のお世話になる。下手をすれば罰金を取られて、さらに金を失う。
「…………待って、あたしと姉さんが廃除されたなら、あんたの金は誰が相続するの」
「子が相続権を失った場合、孫のキララに相続権が発生する、つまり静と優一も相続人になる。オレになにかすると警察行きになるのは当然だが、他の相続人……イヨと静と優一に危害を加えたり、金をよこせと言った場合も、法的措置を受けることになる」
探偵に静の居所を突き止めさせて、静に金をよこすように言うことも、できない。
もうどうしたって、松たちは金を取れない。
和男からも、イヨからも、静と優一からも。
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