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最期の願いを引き継いで feat.優一
優一と静が初めて会ったのは、実を言うと静の父の葬儀ではない。
五年前、優一がまだ社会人として日が浅かったお盆のこと。
叔父・実が末期癌で入院したと知った。
「ガンになんてなりやがって、入院費高いのに。退院するまで誰が金を稼ぐの」と、叔母が姉……つまりは優一の母・梅に大声で愚痴をこぼしていた。
キララも「ほんと使えない男。欲しい新作コスメがあったのに買えなくなっちゃったしぃ。あんたもそう思わない?」と、優一に同意を求めてきた。
さらには「あ、でも今後は静が働くから学費の心配もないし、早く死んでくれれば生命保険が入るじゃん。早く死なないかな」と。
幼子のようにはしゃいで口にする言葉の中身はゲスとしか言いようがない。
親戚一同が鬼か悪魔を見るような目をしていることに、叔母もキララも、母も気づいていない。
「家族のために働いてくれた大黒柱に、なんてことをいうんだ」と祖父が怒鳴ったけれど叔母たちは無視した。祖父のことを心底毛嫌いしているから。
この三人と血が繋がっていることがおぞましかった。
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