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指輪づくりのあとは、二人でショッピングを楽しむ。
もうすぐバレンタインだから、どのお店も専用コーナーができている。
お菓子を販売していない店でも、バレンタインラッピングします! というPOPがついている。
ネクタイ、ネクタイピン、メンズ香水、マフラー、万年筆。
静は真剣な顔で商品棚のサンプルを手に取り、優一の意見を聞いてくる。
「優一さんは受講生さんや職場の方からチョコをもらうこと、ありますか」
「それって、ヤキモチ?」
「あ、えと……チョコをたくさんもらうなら、私が甘いものを贈っても食べ切れなくて困るかな。優一さん、絶対に生徒さんから慕われていると思うから」
「そっか、そうだよね、ハハハ…………。うん、毎年職場の女性たちが、皆さんでどうぞってくれるし、受講生からももらうよ。だいたい四箱くらい」
期待してしまった自分が恥ずかしい。
静が「私以外の人からのチョコは貰わないで!」と独占欲強めに嫉妬するタイプじゃないのはわかっている。
けれど、貰ってくる前提の気配りをされるのは寂しいと思ってしまうのは贅沢だろう。
優一は、少女マンガのモテ男子みたいに「愛する静の以外は貰わないぜ!」なんて性格ではない。
くれる人はみんな、慣例だから配っているだけの、いわゆる義理チョコ。
義理であっても時間を使って用意してくれたのだから、いらないなんて突き返すのは失礼な気がしてしまう。
それに甘いものは好きだから、仕事の合間につまむのにちょうどいいくらいに思っていた。
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