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そのあともショッピングモールをめぐり、優一は気になった店の前で足を止めた。
「静。色違いのハンカチセットがあるよ」
「ふふ。向かい合わせでうさぎの刺繍が入ってる。かわいいね」
「それじゃ、これが僕からのバレンタインプレゼントだ。ヨーロッパだと男性から女性に贈るのが主流だっていうし。それに、おそろいのもの、何か持ちたかったんだ」
静も喜んでくれて、店の名前が入ったショップバッグを抱きしめて笑う。
「ありがとう。本当に、優一さんはたくさん私に幸せをくれる。あの家から連れ出してもらえただけでも幸せなのに、年齢の分だけクリスマスプレゼントと誕生日プレゼントをくれるし、こうしておそろいのものを持とうって言ってくれる。もうこの1ヶ月で一生分もらった気分」
「まだまだこれまでの二十一年分をプレゼントしきっていないよ。それに僕も、静から幸せをたくさんもらっているよ。だから、もっといっぱい静を笑顔にしたいし、幸せを分け合いたい」
「それじゃあこれからもずっとずっと、一緒にいないといけませんね」
「そうだとも。新婚旅行だって二週間後に控えているだろう。初春の湯河原はすごくきれいだと思うよ。僕、内風呂付きの宿なんて生まれて初めて泊まるんだ。楽しみだね」
優一はこれからも静とささやかな幸せをわかちあって、生きていきたいと心から願う。
これまで悲しいことが多かった分、抱えきれないくらいたくさんの幸せを静に贈ろう。
二人で手を繋いで歩きながら、優一は改めて思った。
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