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「何やってるの、二人とも」
呆れたような声が、庭先に響いた。
娘だった。イギリスにガーデニングの勉強に行くと言って飛び出したきり、連絡一つ寄越したことがなかった。その娘が、何故今頃戻って来たのだろう。目元を手の平でこっそりと拭い、私は答えた。
「なんでもないよ。それよりお前」
「お願い、お父さん」
娘が私を呼んだ。その表情を、私は以前にどこかで見たような気がする。
「──逢って欲しい人がいるの」
そう言った娘の手は、大きな植木鉢を抱えていた。
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