【第4話】

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【第4話】

「な、なんでここに……?」 「ああ。実はそこの魚市場で働くことになりまして」 「え? こ、この街で働くんですか。こんな、何もない街で」 「そうなんですよ。いろいろ事情がありまして」  それから理人は、自分の過去や、ここに至る経緯を語ってくれた。  東京でシステムエンジニアをしていたこと。  しかし激務の日々にメンタルをやられてしまったこと。  のんびりした場所で働きたいと考え、私が勤める旅館で一週間に渡って連泊しながら就職活動をしていたこと。  連泊最終日に、ようやく魚市場で働くことが決まったこと。 「なるほど、そういうことだったんですね」 「ええ。それで、ようやく仕事が決まって一安心っていう段階です」 「でも、大丈夫なんですか? 魚市場って結構体力が要る仕事ですよ。そんな細い体だと苦労するんじゃ……」 「ははは! ご心配ありがとうございます。でも、今まではパソコンばっかりいじってて、運動不足でしたからね。少し体に喝を入れてやりたいんですよ。ほら、細マッチョ好きの女性も多いじゃないですか」  確かに、私も細マッチョは好きだ。これでもか、というほどの筋肉に覆われた体にはやや抵抗があるものの、細くしなやかな筋肉は美しく思える。 「だけど……魚市場でつく筋肉って、どちらかというとごつめの筋肉だと思いますよ」 「え、そうなんですかっ? まいったなぁ」鼻の頭をぽりぽりと掻きながら困り顔を作る彼の姿に、思わず見惚れてしまった。 「あれ? どうしましたか?」  朗らかに尋ねてくる。  しまった。見つめすぎた。  そう思い、目を伏せる。  そんな私の行動などまるで気にしないかのように、彼が言葉を継ぐ。
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