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【第2話】
私が押し黙っていると、理人が身を乗り出してきた。「なぁ君華、僕に悪いところがあったら謝るから」
眉をハの時にしながらしょげている。かわいい。
でも、駄目だ。もう決めたのだから。
「理人に悪いところなんかないよ。感情だけでいえば、今でも大好きだし。でもね、感情だけじゃ恋愛ってできないでしょ?」
「どういうこと? 結婚ならそうかもしれないけど、恋愛は感情だけでするものなんじゃないかな」
「普通はそうかもね。でも、理人の場合は違うんじゃない?」
「……頼むよ君華。もっとわかりやすく言ってくれ。要は、僕と別れたいってことかい?」
手にしていたレモンティーを二口ほど啜ってからテーブルに戻し、理人の左手に視線を送った。
「私ね、昨日、見ちゃったんだ。理人が、私と会う直前に左手の薬指から指輪を外してるところを」
「え……。う、嘘……」
理人は絶句し、口をポカンと開けたまま二の句が継げなくなっていた。
代わりに私が話を続けた。「前から、薬指の根元に指輪の跡があったから気になってはいたんだけど、ただバツイチってだけなのかもしれない、って思うようにして知らんぷりしてたんだ。でも、わざわざ結婚指輪を外してるところを見ちゃったら、もう自分に言い訳できないよ」
理人は俯き、何か考え事をしているようだった。
どう誤魔化そうか悩んでいるのだろうか。
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