……駄目、ですからね?

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 ……ところで、それはそれとして。 「……えっと、どうかしましたか藤島(ふじしま)さん」  そう、些か唐突とも思える問いを掛ける僕。だけど、これには一応理由があって。と言うのも――先ほどの和やかな雰囲気から一転、どうしてか睨むように僕の方を凝視している彼女がいるから。……いや、睨むというほどではないけど……それにしても、ついさっきまでの穏やかな微笑からはほど遠く―― 「……駄目、ですからね?」 「……へっ?」 「……だから、モテるようになったからって……その、簡単に他の子に手を出すようなチャラいことは駄目ですからね、って言ったんです」 「……えっと、分かりました……?」  すると、不意に軽く口を尖らせそんな忠告をする藤島さん。……えっと、つまりは誠実な人間であれと言うことかな? でも……こう言ってはやはり申し訳ないけれど、それは流石に過大評価だと思う。  もちろん、藤島さんのお陰でここ最近における僕に対する評価が大いに見直されていること自体は否定しないものの……それでも、流石にモテるとまでは――  ――まあ、それはともあれ。 「……その、今更ではありますが……本当にありがとうございます、藤島さん」 「……へっ?」  そう、深く頭を下げ感謝の意を伝える。そんな僕の唐突な行動に、少し驚いた声を洩らす彼女だったが―― 「……ふふっ、どういたしまして。冬樹(ふゆき)先輩」  ややあって顔を上げると、そこには少し悪戯な――それでいて、陽だまりのように暖かな微笑を浮かべる藤島さんの姿があった。
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