4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
時はクリスマス。
飲食店にとっては掻き入れ時だと言うのに、町のうどん屋には誰も来ない。
バイトの女の子に「寂しいですね」と言われながら見た外には、黙々と雪が降っている。足跡をつけて楽しむ事ができるくらいには銀色の化粧。
「客来ないだろうし、もう上がっていいよ」
「はーい」
あと1時間くらいで店が閉まるし、それくらいなら1人でもできると思い店主はそう言ったところで入口の戸がガラガラと音を立てる。
「いらっしゃいませ~」
白い猫。雪と同じ色をしているソイツの目は細く、二足歩行で席までやって来る。首に巻いたマフラーと鼻水が可愛かった。
「いつもありがとうございます。」
バイトの女の子が上がって行ったくらいのタイミングでカレーうどんを出す。件の猫は常連で、いつもカレーうどんしか頼まない。猫は特別に唐揚げの入ったカレーうどんを異常な程フーフーし、一滴の飛沫も残さず音もたてず食べる。匠の技に店主はいつも驚かされる。
「ありがとうございました。」
店主に見送られ、貴重な客は店を出る。
店先には、客の猫を模した雪だるま。「ありがとう」と木の枝で作った文字に、木の枝で作った顔。マフラーをかけてあげ、猫はその場を去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!