誓いの言葉

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智里と久しぶりに会った母親は目が赤い、智里はふくよかだったはずの母が少しやつれたような気がしてショックを受けた。 春馬との結婚が決まって2人で住むために実家を出て以来だから3か月ぶりかな。そういえば、結婚式までにダイエットしなきゃと言っていたからそれで瘦せたのかな、けどこれじゃあやつれているよ、そう教えてあげなくちゃ。 母一人子一人の家庭で育った私と母の関係は切っても切れないものだ。 春馬と出会って結婚しようとプロポーズされたとき、私は悩んだ。 ずっと一緒だった母を一人置いて自分だけが幸せになっていいのかと、母を一人にしていいのかと。そんな私を『何言ってるのよ、私はまだ面倒を見てもらわなきゃいけないぐらい老いぼれてはいません』と笑い飛ばし、仏壇の父の写真に向かって『智里が幸せをつかんだよ』と話しかけていた。私には父の記憶はない、私がまだ3歳のころに交通事故で亡くなったからだ。私にとっての父は写真の中で笑う、今の私より少しだけ年上の人だ。 春馬も父の写真と母に向かってぽろぽろと涙をこぼしながら『智里さんは僕が守ります、必ず幸せにします、二人で幸せになります。』と誓ってからまだ3か月。
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