誓いの言葉

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智里の記憶には確かでないところもあるようだった。 覚えている最後の日は…結婚式場での打ち合わせだった。 思っていたよりも打ち合わせが長引いたからといつもは使わない高速を使っての帰宅途中、春馬の運転する車は事故に巻き込まれた。観光バス、トラックも巻き込んだ総勢10台にも及ぶ大事故だった。 即死1人、重軽傷者多数と言う大惨事。それぞれが病院に運ばれたものの、智里と晴馬は違う病院へと運ばれたらしい。 らしいというのは智里の記憶がないからだ。 打ち合わせで最後に担当の斎藤さんに挨拶をし、車の中でも春馬と何かを話したことまでは覚えているというのに、何を話したのかは思い出せないままだった。 そして智里の目が覚めたのは事故から2週間もたってからだったということを聞かされ、楽しみにしていた結婚式がどうなったのか心配する、が、事故のせいでできなくなったのよと母親から聞かされた。 春馬は…春馬はどうしたんだろう。 けがをしたのかな?会いたい。 母に必死に『春馬は?』と聞こうと口を動かすが、思い通りの声は出ない。 それでも何回か声を出そうとしているうちに母は気がついたらしく、 『春馬君は別の病院だから、はやく元気にならなきゃね。』とだけ教えてくれた。 母と色々と話したいが声は出ないし、何日も寝ていた体は回復のためまだまだ睡眠を必要としているようで、また瞼が自然と降りてくる。 「ゆっくり寝なさい、また明日来るね。明日にはもう少し声が出るといいね。」
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