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それから1週間、毎日春馬が会いに来てくれた。それは決まって夜、あたりが暗くなってから。
もう仕事に復帰したんだろうか。まだしっかり声の出ない私が聞こうとしても春馬は教えてくれなかった。
それでも毎日の春馬との時間は穏やかで幸せだった。
そして一週間目の今日、春馬が言った。
『智里、結婚式での誓いの言葉を斎藤さんから教えてもらったのを覚えてる?』
もちろん、とうなづいた。
『汝、その健やかなるときも、病めるときも喜びの時も、悲しみの時も、富めるときも、貧しい時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、死が2人を分かつまで、真心を尽くすことを誓いますか?』
誓いの言葉を春馬が言った。
結婚式はこの事故でできなくなったけど、私が元気になって退院したらまた計画しようねと、春馬に出ない声で伝える。春馬はなぜだか悲しい顔をして首を横に振った。
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