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私は夢を見た。その夢に私は存在しておらず、言うなればスクリーン越しに映画のワンシーンを見ているようなものだった。
夢の中には女だけがいた。全裸のまま、あの見事な黒髪と白い肌でコントラストを作りながら、何かに抱きついていた。
それは黒い、大きな柱だった。女はその柱に両手両脚をまわすと、自分の性器をこすりつけるように身体を上下させていた。
官能的な光景だった。目は半ば閉じられ、口からは喘ぎ声とともに花のつぼみのような舌がにょっきりと伸びている。熱い吐息は重く、質感をもって雲のように周囲に垂れこめている。
そこで私は気がついた。女が抱きしめていたのは、自分自身の黒髪だということに。
女の肩口から伸びた黒髪は夢の世界の大地を覆い、その一部が尖塔のように天高くそびえていた。
女はその宗教の神体めいた黒髪を、全身を駆使した抱擁で受け入れていたのだ。
***
私はふたたび目覚めた。精神と肉体は完全に覚醒していた。下半身が火照り、妙に熱く感じる。
はねのけるようにして布団を取り払った私は、そばに置かれた女の鞄を手にとった。匂いをかいでみたが、どうにも違う。そこで私は起き上がると、ベッドのそばで脱ぎ捨てられたままになっていた女の衣服を取り上げた。
顔を近づけると、汗の臭いとともに女が放っていた香りが鼻腔をくすぐった。
直後、私のペニスはふたたび猛々しく膨らんでいった。
仰向けになった私は女のかぐわしい香りを肺一杯に吸いながら、傷の痛みも意に介さぬまま右手で握った肉棒をしごきはじめた。
頭の中で、女の幻影が私に妖しく笑いかける。
絶頂はすぐにおとずれた。白濁した精液を吐き出すなか、背徳的な快感が全身を震わせる。
だが決定的な何かが足りなかった。それがなんなのか、すぐにわかった。
私はあの女を心から求めていたのだ。
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