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夢を見た
夢を見た
貴方の夢だった
食事の会?
人が大勢居た
何故だかビニールハウスが縁側から見えた
和室だった気がする
夏だったか…春だったか…
貴方の手は少しカサッと水分がないのに、凄く大きくて肉厚だった。
私は何度もにぎにぎと手を動かして、貴方の手を握り直すようにしたら、貴方も何度かギュッギュッとしてくれた。
私が何を聞いたのかは分からないが、貴方は低い声で優しく「いいよ」と二回程繰り返した。
手を繋いだまま、体を寄せたら嫌がるかと思ったけど、おそらく私は興奮していて、その身をすり寄せるようにして彼に密着した。
貴方は優しく笑った。
嫌がる素振りも見せずに、ただ何も邪魔の入らない澄んだ月夜のように微笑んで、私を優しく見下ろしたのだ。
どこに居たのだろう?
何を聞いたのだろう?
あの人達は誰だったんだろう?
古い日本家屋。
縁側が見える和室。
まるで誰かのお葬式のようだった気もする。
貴方は隣に居て、私は今よりずっと体が小さかった。
少女と呼ぶに相応しい私は、何色だかは覚えていないワンピースを着ていた。
爪先を見たら、畳に立った私は発表会の時くらいにしか履かないような白いタイツを履いているようだった。
やはりワンピースは黒だったのかも知れない。
バタバタと大人達が忙しそうにする中、私は貴方に夢中で、貴方は誰にも見えていないように、私の隣で手を繋ぎ、ただ微笑んでいた。
青光りするような艶の黒髪で、その美し過ぎる顔は、時折庭先を眺めた。
視線を追うように貴方の目から庭先に視線をやると、温かい陽だまりがあって、私は少し目を細めてから貴方に視線を戻した。
何かを話した気がする。
でも覚えていない。思い出せない。
貴方の優しい声で
「いいよ」
とだけハッキリ。
まるで言葉に輪郭があるように、指先でなぞれるように
それだけは覚えている。
パンと弾けたシャボン玉に驚いたように、ソファーに横たわった身体は動かず、瞼だけで衝撃を受けた私は、パチッと意識を取り戻す。
手にカサッと水分のない大きく綺麗な手の感触を確かめる。ゆっくり、にぎにぎと手を動かしたら
ボロボロと涙が溢れた。
白昼夢
いいよと微笑んだ貴方を
私はあまりに簡単に
忘れて生きて行くのだろう。
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