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少しずつ…
「すみません…このマネキンが着てるニットってどこにありますか?」
駅ビルの服屋でそう尋ねると店員さんがいかにも造られた完璧な笑顔で答える。
「こちらですよ。このニット可愛いですよね。袖がふわっとしていて、とても人気です。私も色違い買ったんですよね」
店員さんに話しかけられるのが苦手で買い物があまり好きではない。試着なんてしたら必ず買わなくてはいけないような気持ちになってしまう。だから店員に話しかけられないよう無難な服屋で適当に買うことが多かった。
「あれ、マネキンが着てるスカートもカゴに入れて下さってるんですね。この組み合わせとても良いと思います」
地下通路から一番目立つところにディスプレイされていた組み合わせをそのまま買うことにしたのでそう言われた。ほっといて欲しいと思うけど、思い切って声をかける。
「…あの、私ってこのニットだったら何色が似合うと思いますか?」
恥ずかしいと思いながら聞いたが、店員さんは嬉々として選んでくれる。
「お姉さん、肌の色が白だから…この淡いブルーとかどうですか?」
お姉さん…やはりこのお店は少し若い子向けだったかな?と色々なことが気になるけど、店員さんに悪気はないだろう。
鏡で確認し悪くないと思ったので、値段も見ずにニットとスカートを買うことにした。
このお店に来る前に初めてのデパコス、デビューも果たした。
貯金したって使い道なんてないんだし、今しかこんな服着ることは出来ないんだから…。
そんな気持ちになる。
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