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愛のない関係
目が覚めると隣に西野君がいた。
彼はまだ寝息を立てている。
私は昨夜のことを思い出し、恥ずかしさで胸がいっぱいになる。
「抱いて欲しいの」
酔っ払った私は大胆にも西野君にそう言った。もしかして誰かに会話が聞かれていたかもしれないと思うとぞっとする。
西野君は困った顔を浮かべた後に、じっと私を見た。まるで品定めされるかのように冷ややかに。
「じゃあ解散したらLINEで連絡するね」
そう彼は短く言い、にっこり微笑んでみんなとの会話に戻っていく。
私は彼の指を見つめて身体がほてっていくのを感じたし、いつも以上に酔いが回ってふわふわしている。
どうしても誰かとセックスがしたかった。
そこに愛がなくてもいいから女として後悔したくなかった。
みんなと別れてからLINEでホテルの場所が送られてきた。
「本当に大丈夫?」
そんなメッセージも付け加えられていた。
私は「行くね」とだけ返信して、指定された場所へ向かう。解散した駅の入口とは反対の場所にあった。
私を見ると西野君は笑顔で手招きして、中に誘導する。もちろん私はこういう場所に慣れていなかったので緊張する気持ちもあったが、それよりもまるで少女のように嬉々としていた。
セックスはとても良かった。
彼は最初に長くキスをして、丁寧に前戯してくれた。
最後に男性と身体を重ねてから4年ぶりだったが、身も心もあつくほだされている気がした。
キツく強ばっていた自分の身体が柔らかくなっていくのを感じた。
熱が身体中に伝わる。
私は幸せの中目を閉じる。
「三船さん、こんなこと望むなんて意外だね」
その言い方はなんだか私を馬鹿にしているようで私は恥ずかしくなる。
目が覚めた西野君は昨夜とは違いどこか冷めていた。
酔いから覚めた私は冷静になり、どう会話していいか分からなかった。
「また良かったら連絡してよ。結婚するまであと数ヶ月あるから。俺も遊んでおきたいんだよね」
西野君はそんな風に言った。
「ホテル代は俺が出すよ。先出るね」
あまり話さない私を気にとめず、着々と出発の準備をする。
付き合っていない男女のセックスは、どうしても女性側が不利になる。
だって、身体を重ねるとそれだけで相手のことを熱っぽく想ってしまうのだから。
そんな風に主人公が語る恋愛小説を思い出す。
「じゃあまたね」
まるで爽やかな笑顔で西野君は出ていく。
セックスしたこと自体に後悔はないけど、心のどこかに虚しさが混み上がってくる。
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