いつも思い出す時は

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いつも思い出す時は

桐谷涼について思い出す。 彼とは高校2年、3年と同じクラスだった。 特別進学コースに希望して選抜された。 田舎の進学校だったので、生徒は概ねみんな真面目だった。 夢があったわけではないけど、大学進学で上京したいと思っていたので親に負担をかけないように奨学金制度があったり、公立の学校に行ったりしたくて黙々と勉強をしていた。 桐谷君は学年の中で特別目立つ生徒ではなかったけど、同じクラスになって人に好かれる愛嬌のある人間だと知った。 ムードメーカー。 誰かを傷つける冗談は言わないけど、くすっと周りが明るくなるような発言をした。 2年の夏。 「勉強しに学校に来てるんだからこのクラスは席替えしないよ」 担任の中年の女性教諭が言う。不満そうか生徒たちの中、桐谷君が手を挙げた。 「何ですか?」 「困ります。こいつの隣だと誘惑に負けてつい私語しちゃうんです」 いたずらっぽく隣の席の男子を見て桐谷君は言った。 「なんで俺のせいにするんだよ」 言われた男子は笑って言う。 先生も笑って 「じゃあ学期に一度ずつだけ席替えね」 そう言ったので、みんな桐谷君が好きになった。 そういう朗らかな桐谷君のことが私は心から羨ましくて、憧れていた。 私はどちらかというと暗くて自分の内面を上手く表現することが苦手だったから。 西野君が去った後、電車で帰宅して最寄り駅の珈琲ショップに寄った。 このまま家に帰ったらじめじめした気持ちを引きずってしまいそうだったから。 気分転換にとびっきり甘いクリームの乗った珈琲を頼んだ。モーニングセットもつけて。 そんな中で桐谷君のことを思い出す。 私はいつも何か嫌なことがある度に桐谷君を思い出しているような気がする。
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