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「・・・・・・死んで、くれる?」
国王の発したとは思えぬ言葉に、グリルは顔が青ざめていくのを感じていた。頭がうまく回らない。彼の言っていることが理解できない。
「この国の中でも最も強い力を有しているのは、儂ではなくあの2人じゃ。連中を始末すれば、この国は完全に儂が支配できると思ったのだが・・・・・・さすがに、国王が民を殺めるために兵を派遣するのはな」
そのことが漏洩でもしたら、ちと困る。
退屈そうにヒゲをいじりながら、国王は何気なく言った。
呆然として、グリルは周囲に立つ兵士たちを見回した。しかし、どの顔にも変化はない。駒として仕える彼らには、もはや王の言葉に何の疑問も抱かなくなっている。
「嘘だろ──」
グリルは、声がかすれているのを自覚していた。
あり得ない。そんなこと、あるわけがない。そう思いたかった。そう信じたかった。しかし、もう信じることはできない。
心当たりならあった。
無力な凡人の自分が、天才的な力を持った2人とともに赴く勇者として任命されたことだ。
──足手まといになる人間を同行させて、途中で死にやすくさせるためだ。もし彼らだけで魔王城に向かっていたら、怪我ひとつ負っていなかったろう。
自分は、カリグラとレイラの足を引っ張って死地に落とすためだけに利用されたのだ。だから、何もできな平民から選ばれた。
全身の血の気が引いていくのを感じる。視界がぐわんぐわんと揺れる。信じられない。信じたくない。
そう思っていても、心の奥底に眠る理性は事実を理解している。
「俺たちが、死にかけたのは──」
歯を食いしばり、憤怒に燃える瞳を王に向けながら。
グリルは、今までにないほどの強い怒りが、沸き立っているのを感じていた。
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