処刑命令

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 遠くで、2人が処刑されようとしている。見過ごすわけにはいかない。  助けに行きたいが、この場から動くことはできなかった。グリルの目の前には、椅子にふんぞり返った国王がいる。その周囲には、武器を携えた兵たちが何十人も並んでいた。  炎の力もろくに使いこなせず、武器の扱いといえばさらに素人並みの自分が歯向かったところで、勝てるわけがない。 「時間まで、そう長くはないな。あいつらはすぐに処刑される」  ちらりと壁際の掛け時計に目をやりながら、国王はつぶやいた。  小さな声だというのに、まるで上方から強い力で押さえつけられているかのように、体が動かない。  これが、上に立つ者の風格。  一国を取りまとめる王の雰囲気に、グリルは圧倒されていた。  だが、今だけは、その力に打ち勝たなくてはいけない。カリグラもレイラも、死ぬ理由はない。理不尽な命令から、彼らを助けなくてはいけない。 「なぜ、こんな──」  とぎれとぎれの言葉を、グリルは吐き出した。国王の視線がふらふらと周囲をさまよい、それからグリルのもとにぴたりと据えられた。 「教えてほしいか。国一番の魔道士と治癒者が、」  時間は、刻一刻と過ぎている。カリグラとレイラの安否を考えれば、一刻も無駄にはできない。だというのに、指先一本動かせない。  もしや、彼らの処刑は最初から決まっていたのだろうか。そのことに気づいてしまったからだった。  この国では、処刑といえば火炙りだ。そのためには民への告知や場所取り、薪の用意などの準備時間を要する。処刑が決まった日の当日に執り行なうことのは、如何に迅速になろうとも難しい話だ。  国王は、やれやれとため息をつきながら、何気ない口調でつぶやいた。 「あの2人を処刑すれば、晴れて我が国に立ち向かえるほどの力を持つものは一人としていなくなる。魔王討伐の旅路で死んでくれることを願っていたが──そう簡単にはいかなかったか」
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