目的地

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 足を忍ばせて、彼らは魔王城の中に足を踏み入れる。豪華絢爛な作りの玄関は広く、舞踏会でも開けそうだ。  だというのに、どこか暗く感じるのは、照明をつけていないことだけが原因ではないだろう。  そんなことを思った途端、背後から強い殺気を感じた。咄嗟にカリグラたちが振り向き、遅れてグリルもそちらを見ると、そこには巨大な影がある。  大人2人分ほどもある巨体に、4本の角。ぎょろりとした大きな隻眼に、鋭い牙。どこか既視感を覚えざるを得ない、その異形は── 「それほど焦らずともいい。(われ)が、貴様ら人間の言う魔王だ」  ──伝承の中に伝え聞くしかなかった魔王が、目の前にいた。  倒さなくてはならない。それは分かっていた。だが── 「簡潔に話をしよう。吾は、人間に危害を加えるつもりはない」  衝撃的な一言に、グリルは目を見張った。  どういうことだ。悪の象徴とも言える魔王が、人間を支配するつもりはないだと?  さらに魔王は、驚くべきことを口にした。 「かつて世界中の人間を蹂躙し、人類を支配下に置こうとしていた先代の魔王は、
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