2人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
足を忍ばせて、彼らは魔王城の中に足を踏み入れる。豪華絢爛な作りの玄関は広く、舞踏会でも開けそうだ。
だというのに、どこか暗く感じるのは、照明をつけていないことだけが原因ではないだろう。
そんなことを思った途端、背後から強い殺気を感じた。咄嗟にカリグラたちが振り向き、遅れてグリルもそちらを見ると、そこには巨大な影がある。
大人2人分ほどもある巨体に、4本の角。ぎょろりとした大きな隻眼に、鋭い牙。どこか既視感を覚えざるを得ない、その異形は──
「それほど焦らずともいい。吾が、貴様ら人間の言う魔王だ」
──伝承の中に伝え聞くしかなかった魔王が、目の前にいた。
倒さなくてはならない。それは分かっていた。だが──
「簡潔に話をしよう。吾は、人間に危害を加えるつもりはない」
衝撃的な一言に、グリルは目を見張った。
どういうことだ。悪の象徴とも言える魔王が、人間を支配するつもりはないだと?
さらに魔王は、驚くべきことを口にした。
「かつて世界中の人間を蹂躙し、人類を支配下に置こうとしていた先代の魔王は、既に倒されている」
最初のコメントを投稿しよう!