目的地

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 レイラとカリグラの後を追い、グリルは魔物の群れの中に飛び込んだ。目指すは魔王、その首だ。 「轟け、雷よ──」  カリグラが、声高に詠唱の言葉を唱えているのが聞こえる。レイラが、群がってくるデーモンを吹き飛ばしているのが見える。  眼前に、ゴブリンが迫ってくるのが見えている。 「炎の神、よ──ペリ、ペリドゥネ──」  泣き出しそうな声で、詠唱を唱えようとする。けれど、声は涙にむせ、言葉にならない。  たちまち、肉食動物のようなゴブリンたちがグリルに襲いかかってきた。足がもつれ、グリルは後方へ転んだ。  緑色のシワだらけの皮膚が視界を覆う。ねっとりとした体液が腕に絡みつき、鋭い牙が口から覗いた。 「グリル!」  カリグラの声が聞こえると同時に、白い閃光が一閃し、ゴブリンたちを薙ぎ払った。  あらゆる魔物を滅する、雷の槍だ。 「助かったぜ、カリグラ」  慌ただしく礼を述べる暇もない。気がつけば、グリルは脇から酷く出血していた。赤い血が流れ落ち、地面を濡らしていく。頭がふらつき、視界がぼんやりとする。  今度は背後から、巨大化した子鬼たちが襲いかかってきた。騒々しい音が耳をつんざき、思わずグリルは視界を覆う。 「急げ、一旦のくぞ!」  手を引っぱられ、グリルは後退していった。途中で、鷲と髑髏のキメラの悪魔と戦っていたレイラを拾い、3人でもと来た道を引き返していく。 「とっとと人間のところへ戻れ。それが一番いい」  最奥に座る魔王の言葉を、背中に受けながら。
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