眠り

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眠り

「おい、爺さん。グリル爺さん・・・・・・って、眠っちまってるじゃねえか」  退役勇者専用の介護施設。  ここで働き始めてから既に10年以上が経とうとしている職員の一人であるサイロは、車椅子に乗ったまま目を閉じている老爺(ろうや)に、声をかけていた。 「まあ、いいか。今日は何回か炎、暴走させてたもんな」  既に日課となったグリル爺さんの儀式──要するに、自分に向かって放たれる火炎放射を避けること──が、普段よりも多かったことを思い出しながら。  サイロは、ゆっくりと車椅子を押していく。  グリル爺さんは、安らかな寝顔で眠っている。その老いた顔には、珍しく満面の笑みが浮かんでいた。 「昔の夢でも見てんのかな」  小さくつぶやくと、サイロは再び、車椅子を押して歩き始めた。
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