(二)

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 異動の初日も忙しく働いたが、翌日も忙しかった。 「おい、出張の手配はできたのか」「先方のアポはとったのか」「ここの書類棚はいつ入荷するんだ」「あと二人回してもらわなければ回らないぞ。小野部長には電話したのか」「デスクと椅子も俺の分だけじゃだめだろう。見ればわかるんだからすぐにやれ」「優秀だと聞いていたが、こんなものなのか」「スピード感持ってやれ。俺の仕事についてこれないぞ」  反町部長の矢継ぎ早で怒濤の指示に追い立てられるだけ追い立てられて、彩香は一日を終えた。仕事はできる方だと自身では思っていたが、それは自分が優秀なのではなく、あくまですでにやり方が定まった定型の作業に慣れていたからに過ぎなかったのだ。反町部長自身が抱える仕事は多かった。そのため彩夏に振られるタスクは膨大になったのだ。  おかげで退勤後の満員電車でつり革に掴まっているとき、彩香はうっかり寝てしまいそうになった。 (続く)
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