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二十三時を過ぎる頃に帰宅した彩香がダイニングに入ると、テーブルの上には夕食を食べ終えた食器が出しっ放しになっていた。せめて流しに戻すことぐらいしてくれてもいいのに、と彩香は呟かずにはいられなかった。冷蔵庫から麦の辛口炭酸水の銀色の缶を取り出してプルタブを押し上げ、窒素を抜きながらリビングにやってきた。そして背中から体をソファに放り投げ、三五〇ミリリットル缶の約半分を一気に飲み干した。
口の周りに付いた泡を袖口で無造作に拭うと、鼻から抜けるホップの香りの後に、ココナツオイルを不快に調整したようなざらつく匂いをかぎ取った。
(続く)
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