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「私は今の職場では役に立っていませんか」
「違う、逆だ。君の上司からは君を異動させるのはやめてくれと泣きつかれたよ。ただ、反町部長からは優秀な人間が欲しいとの要望だ。定期の異動辞令で何人か送り込んだが、全て突き返されてね。仕方なく、だ。おかげで俺は久しぶりに、真面目に人事の仕事をしたよ」
彩香は「有能な人間」というキーワードに少し心がときめいた。そのおかげでうっかり「ありがとうございます」と辞令書を受け取ってしまった。しかし、まだ新規の事業部での仕事がどういうものなのか聞いていなかった。
気づいたときには小野部長は「じゃあ、よろしく」とだけ挨拶を残して会議室から出て行ってしまった後だった。
(続く)
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