第6章:決戦

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第6章:決戦

ノアの基地を潰した日から、1週間。 山賊の家5軒、エルフの空き家3軒、キメラーズの基地1軒。 1か月間、これだけの場所を巡って、やっと一枚の地図になった。 達成感のあまり、地図を広げては閉じてを繰り返す。 完成した地図を見て、ルルも耳をピコピコ動かして喜んでいる。 明らかになった集落の場所は、北山の山頂。 今いるほら穴は、北山の麓にある。もし方向がズレていたらと焦った時もあったが、幸いにも正しい道を辿って来れた。 後はこの山を登るだけなのだが、これが一番危険なのだ。 まず、今日は猛吹雪なので視界が見えずらい。 そして、キメラーズと対戦になる可能性もある。 基地を潰したとき、ノアだけ居なかった。でもアイツなら、誰の仕業かなんて一目でわかるだろう。2年間一緒に訓練してきたんだ。僕の殺し方なんて、とっくにわかっている。僕が犯人であることは、上層部に届いているはずだ。 キメラーズとの戦闘は避けられない。だが、それがいつになるかはわからない。山頂に着いた後かもしれないし、登っている最中かもしれない。 今頃、何万もの衛兵が僕を探して外をうろついているだろう。 さっきから、何匹もの馬が走る音を耳にしている。 今キメラーズの目的は、僕を見つけ殺すことだが、ルルの存在がバレると、 ルルも殺害対象になってしまう。 でも、見つからずに山頂まで登りきるのは非常に難しい。 最悪、ルル1人でも登ってもらうしかない。 「ルル。」 返事をするように顔を上げる。 「僕からのお願い、聞いてくれる?」 任せてと言うように、張り切った表情をする。 「これから何が起こっても、僕の言うことに従ってくれ。  そうすれば、ルルは絶対に幸せになれる。」 ルルは頷いてくれなかった。 僕がどうしてそんなお願いをするのか、彼女はもうわかっていた。 声にならない声で嫌だと必死に叫ぶ。 今まで、一度も駄々をこねずに兄についてきた。 兄の言うことはいつだって正しかったから。でも、これは違う。 「ールル、」 聞きたくないと、首を横に振る。 「お願い、聞いてくれるって言ったじゃないか」 これから起こることは、今までの旅とはレベルが違う。 起こり得ないことが起こる可能性がある。 集落に着くまで僕が側にいてあげられる保障は無い。 それでも、ルルが無事に集落に着くように最善は尽くすつもりだ。 ルルがこのお願いを受け入れてくれないことはわかっていた。 だから、わざとずるい言い方をした。 「良い子だから、お願い。」 後頭部に手を回し、互いのおでこをくっつける。 下唇を噛み締めながら、コクリと頷いた。 ほら穴から外を見れば、50m先に衛兵が馬を走らせているのが見える。 あそこからだと、小さいルルの姿はよく見えないだろう。 こちらに気づいていない内に、ここを出た方がいい。 「ーじゃあ、行こうか」
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