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刺さった刃を引き抜き、後ろに下がる。
白い地面に赤い斑点が落ちる。
「俺の仲間を殺したの、お前だよな」
「そうだよ。何か問題があるか?」
僕の言葉で、額に青筋を立てる。
「ー話をしよう。ノア」
持っていた剣を雪に沈めた。
僕の行動が理解できない様子で、ノアは困惑の表情を浮かべる。
だがすぐに、殺意を込めた鋭い目に変わる。
「…俺は、お前に話すことはない」
再び刃を僕に向けて、距離を詰めてくる。
切り刻むような乱雑な攻撃を、丸腰で避け続ける。
聞く耳を持たないノアに、懲りずに話を続けた。
「なんで仲間が殺されたか、理由を考えたことはあるか?」
「知らねぇ。お前の気まぐれじゃないのか!」
「…じゃあ、聞き方を変えよう。
なんで僕がお前の仲間を殺したか、わかるか?」
その問いに、ピタリと動きを止める。
「俺が、憎くなったからだろ。
俺が居なかったから、腹いせに仲間を殺したんだろ!」
「違うな。お前が憎かったわけじゃない。
お前が居ても居なくても、あの場にいた奴らは全員殺していた。」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇ!」
振りかぶった刃を、手のひらで受け止める。
「聞けよ、ノア。」
刃先を折る勢いで手に力を込める。
「僕は人間そのものが憎かった。
エルフを迫害するお前らが心底気持ち悪かった。」
ノア、お前はわかってない。
どうして僕が真実を話さないのか、どうして煽るような口を利くのか、
どうして剣を置いたのか。
僕はお前を殺せない。でも、お前も僕を殺せない。
本気で殺すつもりなら、今すぐ剣を振り下ろすはずだ。
そうしないのは、僅かでも僕に情が残っているからだろ?
「殺されるべきは人間だ。だから殺した。それだけだ。」
「それだけ、だと…?」
怒りに身体が震えているのがわかる。
「殺されるのが人間ならっ…お前だって人間だろ!!」
「そうだ。だからー」
僕の心臓を目掛けて、剣を突き出す。
僕はわざと、避けなかった。
「僕を殺せ、ノア」
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