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エピローグ
―――10年後
賑やかで活気的な街、ユリオス王国。
今日は年に1度のクリスマス。
店には、サンタが乗ったケーキだったり、
飾り付けられた宝石ようなツリーが並んでいる。どの店も大行列だ。
プレゼント買ってとねだる子供を微笑ましく眺めながら、
10年前と変わり果てた地に白い息を吐く。
ーこの国は、変わった。
エルフ迫害の時代は幕を閉じ、対等に生きる時代になった。
伝説の真実は、人類にしっかり伝えられた。
伝説を偽った王家の人間たちは、まもなく自害した。
私とノアが手を取り合うことで、国は少しずつ変わっていった。
でも、エルフと人間が共存するようになったのは、ここ最近の話。
「国王様がご帰還なさったぞ!」
サンタの格好をしたエルフが声を上げる。
すると、国民が一斉に門へと視線を投げる。
白馬に乗って部下を連れている姿は、国の長そのものだった。
拍手に包まれる中、静かに馬から降りて、国民に笑顔を向ける。
「…任務お疲れ様、ノア。」
「ありがとう、ルル。」
ノアの頭に積もった雪の粉をはらって、男らしくなった顔を見る。
「…ところで、本当に良かったのか?国王にならなくて」
王家がいなくなった今、新しい国王を決めなくてはならなかった。
ノアは私を推薦したけれど、丁寧に断った。
「いいの。お兄ちゃんは、そんな大きなこと望んでないと思うから。
それに私、本を書いて街の子供たちに読んであげる今が、十分幸せ。」
遠慮でも嘘でもなく、心からの本音だった。
「…まぁ、お前に王冠は似合わないもんな笑」
「なっ、何よそれ!」
鼻で笑うノアの肩を軽く叩く。
「ルル姉!絵本読んでー!」
人間とエルフの子供たちが、ツリーの下で手招きする。
その姿があまりにも可愛らしくて、つい頬が緩む。
ノアに軽く別れを告げ、子供たちのもとへ歩く。
「いいよ。何のお話がいい?」
「えっとね、勇敢なる戦士ルイのお話がいいー!」
「僕も!」
「私も!」
「はいはい、寒いから中でね。」
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