第1章:ルル

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捜索にあたる家まで馬を走らせ中に入ると、 そこは悲惨な状態だった。 ドアは外れて、窓は割れ、本棚も食器も全部がゴチャゴチャだった。 ソファやシーツなんかには大量の血がついている。 これは全部、亡くなったエルフの血だ。 この世界は、エルフをこっぴどく嫌う。 はるか昔、エルフが王国を襲い、一つの国が地図から消えてしまったという伝説がある。それが我が国、ユリオス王国なのだ。 しかし伝説というだけに謎が多く、真実は誰にもわからない。 また、エルフの特徴でもある白髪や青い瞳、何千年も生きる生態を理由に、 人間は彼らを化け物と呼んだ。 心底くだらないと思う。 これが教育の一環として、脳に刻まれるのが気持ち悪い。 「おーい、ちゃんと探してるのか?ルイ」 寝室を探すノアが声をあげる。 「あることにはあるが、どれも血で汚れてる」 「まじかよ、、」 見つけるまで帰ってくるなと、隊長から釘を刺されている。 嫌でも見つけなければ、ルルのもとに帰れない。 心は痛むが、探さなければ。 倒れた本棚を起こしたとき、ハラリと一枚、紙が舞った。 「…?」 今は使われていない麻布でできた紙だった。 気になって手に取ると、何やら地図のようなものが描かれている。 ところどころ破れており、場所が明確にはわからない。 それにしても変な図法だ…一体何年前のものなんだ? 「ルイ!あった!」 無意識に慌てて地図をポケットにしまう。 「ベッドの下に大量に羽が保管されてたんだ。見ろよ、これ」 厚い木箱の中に、何枚も重なった透けた綺麗な羽があった。 「早く隊長に提出して帰ろうぜ!」 「ああ。」
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