第2章:幻の村

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集会のおかげで午後の任務が無くなった。 早めに退勤書に記名し、この国一番の大図書館へ向かった。 今朝の国王の話が頭から離れなかったのだ。 エルフの集落、、その跡地が北の山に何個も見つかっている。 もし今も、この世界のどこかに存在するなら… そう思うと夢中で本を漁っていた。 この大図書館には、数百万年前のものから最新のものまでそろっている。 ここでなら、何か手がかりが見つけられるかもしれない。 エルフ集落関連の本を片っ端から手に取り、ページをめくる。 これを何時間も繰り返して、日が暮れた頃。 図書館内には職員と自分以外、誰もいなかった。 「ふー…これといったものはない、か。」 よく考えたら当たり前のことだ。 図書館に来てわかるものなら、もうとっくにわかっているはずだ。 ただ一つ、わかったことと言えば、これまで見つかった5つの跡地には、 1つ共通点がある。 それは、全て北の山で見つかったということだ。 一番可能性があるのは、そこだ。 「地図みたいなのがあればなー…」 ぽつりとつぶやいた己の言葉にハッとする。 地図、、エルフの空き家任務で持ち帰ったものがある。 あれに記されていたバツ印、たしか北の方に書かれていたような… そう思うと居ても立っても居られなくなり、 急いで本を元に戻して図書館を出た。 勢いよく家のドアを開けて、金庫から地図を取り出す。 ベッドでぬいぐるみと遊んでいたルルが、驚いて隣へやってくる。 間違いない。印は北に書かれている。 図書館で見たどの跡地でもない、現に存在している場所だ。 この地図は、エルフの集落を示したものだったんだ。 ここに行けば、もう隠れて暮らさなくたって生きていける。 「…やった!」 この情報は僕しか知らない。 国が集落を見つける前に、ルルを連れて早くここを出よう。 喜びを噛み締めていると、ルルが不思議そうに地図を見つめていた。 「ルル。」 優しく名前を呼び、背をかがめて視線を合わせる。 「ここよりずっと安全な場所があるんだけど、行きたい?」 目をパチパチ瞬かせながら、また不思議そうな表情をする。 「そこに行けば、きっと今より楽しいよ!」 そう言うと、僕の手を握って嬉しそうに頬を緩めた。 やっとこの地獄から抜け出せる。 繋いだ小さな手を、そっと握り返した。
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