プロローグ

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女優の高瀬麻紀が、ミセス★トキコを詐欺で訴えたのだ。 高瀬麻紀は、ミセス★トキコのオンラインサロンの会員。広告塔といっていい。ミセス★トキコを信奉している様子はたびたびSNSに投稿していた。 しかし、その高瀬麻紀は、ミセス★トキコに3000万円というお金をだまし取られたと訴えたのだ。 ミセス★トキコ──本名 合田時子 自宅から警察官に囲まれて出てくる。 逮捕をされた合田時子の様子が映し出され、その姿を見て、誰もが驚いた。 その姿が想像していた容姿と違っていたのだ。 豊満な肢体に、顔は丸くふっくらとして、瞳は小さく、その真ん中にある鼻は丸い。唇は分厚く紅い口紅がべっとりと塗られていた。 想像していた美女とは似ても似つかないその容姿に世間は驚いた。 その姿をフラッシュを浴びせてシャッターを切るカメラマンたち。 合田時子は薄く笑いながら車に乗り込む。 その表情はまるで喝采を浴びて高揚感に包まれたような微笑みだった。 ─── そのニュースを3人の女性がそれぞれの場所で見ていた。 その一人、西村麻里奈は自宅のリビングで掃除をしている手を止めニュースに見入った。 そして、入澤明日香は、職場のパソコンに飛び込んできたネットニュースで、その忘れもしない姿を目にした時、あっと小さく声をあげた。 街中に流れるニュースで、思い出したくもないその名前を聞いた時、菊池由子は、しばらくその場に立ちすくんだ。 そして、それぞれが同じことを思った。 いつか、こんな日が来るのではないかと思っていたと。 合田時子と過ごした日々の記憶が呼び起こされる。 なぜ、私たちはあの時、合田時子の言葉を信じてしまったのか。 今となっては、不思議としか言いいようがないあの1年を。 あの前代未聞だと言われた櫻葉学園幼稚園でのPTA役員の日々を。
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