6人が本棚に入れています
本棚に追加
ちょっとした習性
スマホがLINEの通知音を響かせたので、私はソファーに寝そべったまま手だけを机の上に伸ばした。指先で手繰り寄せたスマホを、仰向けのまま顔の上で操作する。
『ナオ今夜って時間ある? のみいかない?』
大学時代の友人・ミナからだった。私は迷うことなく指を滑らせる。
『ごめん。今日は旦那と約束があるんだ。また今度!』
私は送信をタップしながら目顔で「すまない」とスマホに伝えた。程なくして既読となり、返信が来る。
『そっかー。仲良し夫婦うらやまだわ。またこんどねー』
『いやそんな仲良しじゃないけど! うん、またね』
私がそう返し、そこでやり取りは終わった。
……ここ。ここに私らしさがある。
私は満足している。なぜなら私が返信して終わったから。
流れで言えば「また今度」から「またこんどね」でキャッチボールは成立している。だから最後の私の「またね」は、蛇足とも言えるだろう。
でも、そう分かっていても、私は返事を送ってしまう。送られたら返して終わりたくなる。この気持ち、分かるだろうか。
私はそんな「送って終わりたい派」なのである。この習性、いったいどれくらいの人に共感頂けるのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!