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一見してみれば相性が悪そうな私達。でもこの習性が私達を引き合わせた部分もあるのだ。
私とシュウジは、共通の知人によって出会った。「出会った」と言っても、最初は顔も知らない状態で、メールアドレスのみを交換した状態から始まったのである。
現在のシュウジ同様、私も当時は会社員をしており、新卒から社会人になって三年目だった。驚くほどの出会いのなさに絶望していた時期だったので、知人から「いい人がいるんだけど、メールだけでもしてみない?」という、普段ならば乗らないだろう誘いに乗ってしまった形だった。
LINEだと上手くいかなかった時に面倒だと思ったので、メアド交換で済むならば好都合だと思った。しかしそれは、かつての私が「送って終わりたい」衝動に目覚めたときと同じ状況を意味していた。
そうしてシュウジとやり取りを始めたが、同じ派閥同士の私達は、須く切れ目なく連絡を取り合う関係となった。なぜなら互いに送って終わろうとするので、終わり所がないからだ。
熱愛カップルも真っ青な頻度で連絡を取り合っていた私達は、とある土曜日にもメールをしていた。互いに会社がない日の昼間に、スマホを手に持ってメールを送り合っていた時、私は無性に遣る瀬無い気持ちになってきた。そして気付けばメールにこう打ち込んでいた。
『会って話しませんか?』
『俺もそう思ってました』
シュウジからのその返信で、私達は初めて顔を合わせることになったのだ。互いに送って終わることを譲らなかった私達は、その結果として、実際に出会うことにこぎ着けた。
数時間後に待ち合わせをして初めて対面した時、私はシュウジの、はにかんだ笑顔を見てなぜか確信した。
――この人と結婚するんじゃないかな、と。
今まで付き合ってきた系統の顔でも体格でもなかった。それなのに私は、初対面とは思えないような安心感を、その笑顔に感じたらしい。
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