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サプライズ
それから程なくして、私達は恋人になった。ちょうど今くらいの、寒い時期だったような気がする。そしてそれから約二年の交際を経て結婚した。そこから更に二年が経過して現在に至る。
出会いからは五年弱が経過しているが、その頃から「送って終わりたい派」としての闘いは静かに続いていると言っていい。先程のLINEがそうであったように。
私はLINEのトーク画面に目を落とす。そして口元が緩む。
「……変わらないなあ」
そう。私達のしていることは、なにも変わらない。互いによく分からないマウントを取り合っているような不思議な関係。
そんな私達が変わるとしたらなんだろう。やはり子供だろうか。
どこか幼いのではないかと自覚する私とシュウジは、子供を作ることに消極的だった。ほしくないわけではない、自信がなかったのだ。
それでもいつかはという思いで、シュウジと相談した結果、私は結婚から程なくして仕事をやめた。準備はしていた。
私もシュウジも、三十代になろうとしている。いつまでも「送って終わりたい派」だなんだと、イチャコラしているわけにもいかないということだ。
――思案を巡らせていた私を現実に引き戻したのは、玄関から鳴ったピンポンという呼び鈴だった。
私は反射的に立ち上がると、直ぐ様玄関に向かう。ネットで何か買ったっけな。心当たりは無かったが「はーい」と一言発した。
そして玄関の戸を開ける。
「ただいま」
そこに立っていたのは、シュウジだった。
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