ちょっとした習性

1/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

ちょっとした習性

 スマホがLINEの通知音を響かせたので、私はソファーに寝そべったまま手だけを机の上に伸ばした。指先で手繰り寄せたスマホを、仰向けのまま顔の上で操作する。 『ナオ今夜って時間ある? のみいかない?』  大学時代の友人・ミナからだった。私は迷うことなく指を滑らせる。 『ごめん。今日は旦那と約束があるんだ。また今度!』  私は送信をタップしながら目顔で「すまない」とスマホに伝えた。程なくして既読となり、返信が来る。 『そっかー。仲良し夫婦うらやまだわ。またこんどねー』 『いやそんな仲良しじゃないけど! うん、またね』  私がそう返し、そこでやり取りは終わった。  ……ここ。ここにがある。  私は満足している。なぜなら私が返信して終わったから。  流れで言えば「また今度」から「またこんどね」でキャッチボールは成立している。だから最後の私の「またね」は、蛇足とも言えるだろう。  でも、そう分かっていても、私は返事を送ってしまう。送られたら返して終わりたくなる。この気持ち、分かるだろうか。  私はそんな「送って終わりたい派」なのである。この習性、いったいどれくらいの人に共感頂けるのだろう。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!