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聖夜
あれから、どれくらいの時間が
過ぎたのだろう。
僕は、スマホの画面を見ながら
あの夜のことを思い出す。
夜空を見上げると、
白く、フワフワとした雪が
そっと僕の頭の上に落ちて来た。
吐く息が白い、今年のクリスマスイブ。
キラキラと光を放つ『琥珀色の石』。
その輝きに気づいた僕は、
スマホを耳に当てた。
「涼くん、どこ?」
人混みの中で不安そうに話すあなた……。
「葉月さん、ここだよ……」
僕は一言だけ言葉を発した。
ベンチに座る僕のもとに息を切らして
駆け寄ってくるあなた。
僕の目の前には、あなた……。
あなたの目の前には僕……。
互いに見つめ合い優しく微笑むと、
「今年は、一緒にいれるね」
「そうですね。素敵なクリスマスイブだ」
そう言葉を交わすと、
僕たちは、クリスマスイブで賑わう
人混みの中に消えて行った。
素敵なクリスマスイブに
なりますように……と願いながら……。
~完~
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